ファド男祭り'09開催にあたって (当イベントチラシより)

気づけば、「リスボンのファドは女性だけが歌う」といった日本特有の誤解は、
どこにも見受けられなくなった。今では男性が歌うことに対して「珍しい」といった枕詞がつ
くようなこともなくなった。決して昨年の当イベントがきっかけだったなどとは思わないが、
一つの実践にはなったのではないだろうか。まだまだファド自体が普及していないのだから
「珍しい」もなにもあったものではないが、一般化する前に無意味な誤解が是正されて
本当に良かったというのは、本国から遠く離れた日本でこの音楽に携わる者の総意であろう。

七人の出演者。三人のファディスタに四人の伴奏者。
各々なりのファドとの一年を過ごし、またここに集まった。
今後はまた、様々な組み合わせで有機的な交わりをもってゆくことだろう。
 ファド男祭りは、今回にて終焉をむかえる。冒頭に書いたような状況が
既に出来上がっているのだから、もはや男ばかりであることをアピールする意味はなかろう。
ならばフンドシを締めなおし、次の段階へ進まねばなるまい。
  恥ずかしながら、こんなにも早く最終回を宣言できるとは思っていなかった。
もし再度の開催があるとすれば、この国でファドが文化としてもう二歩ほど 前に進んだ後だ。
  ファド男祭りの存在が、日本のファドの歴史における一里塚となれば幸いである。

2009年6月 月本一史

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